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RZ250のパーツ発注に単車屋を訪れたらそこに「風」が…

好きな「モノ」の第2話は、1980年から1993年頃まで持っていたスペイン製のオートバイの話です。このオートバイ、本来はイタリアで生産されていたドカティの単気筒をスペインのメーカーがライセンスドコピーで生産していたものです。この頃、僕はメグロSG250とRZ250に乗っていました。当時人気のRZを家の前に停めておいたら、わずかのすきにサイドカバーを左右2枚とも盗まれてしまい、そのパーツ発注に、幼馴染みでバイク友達のSBT君と石切のヤマ●オートセンターを訪れました。僕はその時21か22才、デザインプロダクションで働くデザイナーの卵でした。ふと、店内を見ると、ぜんぜん見たことのない単車が!舶来(表現が古い!)のにおいがぷんぷん。心に何か感ずるものがあって、跨がらせてもらうと、なんと深い前傾ポジション。RZ250ももちろんかなりの前傾ですが、こいつはまるでクラウチングスタートの姿勢のような感じ。僕は1発で好きになってしまい、その場で後先を考えずに買ってしまったのです。確か60万円ほどだッたと思います。RZ250はそのまま下取り契約です。金のない僕はもちろんローンで支払い、2年ぐらいだったと思います。RZ250新車が35万円ですからかなり高かったですね。で、このスペイン製ドカティはその名も「ベント」、スペイン語で風と言う意味です。これに乗ると修理にお金がたくさんかかり、ふところが寒くなるので風をひき、それは「スペイン風邪だ」、という意味ではなく「風」になれるんだ!という意味でしょう。友人達はこの「風」をドカティ・ベントと呼ばずにみんなドカべんと呼びました。高かったのに。

お、面白い!この振動、この音、このポジション!

待ちに待った納車の日、ヤマ●オートセンターにRZ250をおいてきて、変わりにスペイン製のドカティを引き取ってきたんですが、これが面白い!振動と音と低いライディングポジションで、RZ250よりずっと早く感じました(そんなわけないけど)。キックは右にあるので、単車の右側に立って右足で踏みおろします。日本の単車は普通左側にキックがあるので、跨がったままでエンジンが始動できますが、信号待ちなんjかでエンストすると、こいつは単車を降りて、おおいそぎでセンタースタンドをかけて、右側でキックを踏みます。素早くできませんので、下手をすると後ろのクルマからクラクションの嵐です。ま、とにかく生まれてはじめての舶来品、例えそれがスペイン製のあまり上等品と言えないものでも、うれしくてうれしくて、暇があれば乗っていました。

壊れる、壊れる!スペイン人はまともに乗れていたかを疑ってしまう!

さて、暫くすると、このスペイン製オートバイの本領発揮です。メーターケーブルは取り出しが悪く切れる、クラッチケーブルは切れる、点火コイルはパンクしてしまう。フロントブレーキのマスターシリンダー(ブレンボなのに)はインナーオイルシールが破れる、キックペダルやチェンジペダルのゴムは劣化して外れる、キャブレターのフューエルストレーナ付きの樹脂部品は割れる、まあこのくらいでかんにんしといたろ。書いたらキリがありません。僕はケーブルや点火コイル等変えられる所は構わずに国産品に取り替えていきました。フロントブレーキのマスターシリンダーなどはヤマハのものをつけていました。ヤマハ+ブレンボでヤマンボです。今、ヤマンボが流行っているようですが、25年前にすでにヤマンボですから時代を先取っていました。(笑)今でも僕のスタジオの壁には、この時外したブレンボのマスターシリンダーが飾ってあります。故障と格闘していた記念品です。まさに戦いでした。ただ、この戦い、スペインの故障野郎の勝利に終わります。15年ほど頑張って乗って(戦って)いましたが、ついに手放しました。しかしこの単車、生まれ故郷のスペインではまともに走ったんですかね?

気に入ってました。

さんざん悪口を書きましたが、実は凄く気に入ってました。今、目の前にあれば、このイラストのように昔を再現してカスタムって乗りたいものです。シルバーとブルーのカラーリングは結構気にいってました。もいちど当時のように塗装し直し、サイドカバーもアルミの板から切り出して、ブレーキは念のためヤマンボにして…  やっぱりやめておきましょう。きっと今この歳で乗ると腰が痛そうだから。

 

今回はここまで。第3話へ続く

 

 

 

DUCATI VENT 350 1979年頃     4サイクルOHV、排気量 350cc、スペイン製のドカティ。スタイルは良かったし(たしかジウジアーロの手による)、コンチマフラーからの排気音は良かった。でもなによりセパハン、バックステップでおまわりさんを気にせず堂々と乗れたし、車検もパスできた。もともと赤のメタリックだったけど、全バラした時に塗装し直したものを描いてあります。タンク、シートは銀メタにブルーメタリックのストライプ、フレームはブルーメタリックです。バックミラーが小さいのは、自転車用の華奢なものをつけていたため。ホイールは何種かあったようですが、僕のは900SSのようなデザインでした

第2話「スペイン製ドカティは風(ベント)と言う名前だった」