ソーイングマシンのデザイン JAGUAR JN100
デジタル家電にカテゴライズされる新世代のミシンのひとつとしてJN100があります。このミシンの特徴としては、任天堂のゲームボーイをデジタルプラットフォームとして使用する事です。
ゲームボーイのソフトカセットにソーイングパターンであるとか、文字や模様のデータを収納し、送信してケーブルで接続されたミシン本体を駆動します。世界で初のゲームマシンを外部のコンピュータとして活用するデジタルソーイングミシンです。
このように画期的なアイデアのもと開発されたものですから、当然、そのデザインにもイノベーターのテイストが求められました。当時、もてはやされていたトレンドにトランスルーセンティックなデザインがありました。新しさ、楽しさを表現するためにクライアントから要求されたイメージがこのトランスルーセンティックなデザインだったのです。
また、従来のミシンと差別化を謀るために、フォルムにもミシンらしくないライン取りを採用しています。開発、デビューから少し時間が経ってしまいましたが、わたしはこのミシンのデザインが完成した時、スチレンフォームで削り出してつくったモデルをまくらもとにおいて寝た記憶があります。ホントは卵みたいなこのかわいいミシンのモデルを抱いて寝たかったのですが、柔らかいスチレンフォーム故、傷をつけては…とそれは断念しましたが。
苦労をおかけした機構設計
従来のミシンとフォルムが大きく違うために、内部にあるアルミダイカスト製のシャシーの設計からして大変だったようです。メカのレイアウトもこれまでのものと勝手が違い、とにかくすべてが新規に取り組んで行く必要があり、関係者には苦労をお掛けしたと思います。熟練の技術陣があって完成したことは間違いありません。
苦労したボディの成形
トランスルーセント部分の色を出したり、それを通して下に見えるボディとの結合部分の処理であったりが大変で、こちらのデザインに関わる部分でも、海外の成形工場へ出かけて行って、チェックし、テストショットが不味い時は金型の修正を徹夜で待ったり、とやはり苦労しました。素地の樹脂粉が日本と違うため、カラービーズのメーカーを何社も試し打ちして自分のイメージにそうようにまとめあげました。
もう1機種、同時に開発が進み、このミシンと2機種が、企業のフラッグシップマシンとしてブランドを牽引しました。マスコミでも大きく取り上げられたこともわたしには良い経験です。